Yamaha MG4FX User manual

MG12/4FX
2
安全上のご注意
ご使用の前に、必ずこの「安全上のご注意」をよくお読みください。
ここに示した注意事項は、製品を安全に正しくご使用いただき、お客様や他の方々への危害や財産への損害を未然
に防止するためのものです。必ずお守りください。
お読みになったあとは、使用される方がいつでも見られる所に必ず保管してください。
■記号表示について
この製品や取扱説明書に表示されている記号には、次のような意味があります。
■「警告」と「注意」について
以下、誤った取り扱いをすると生じることが想定される内容を、危害や損害の大きさと切迫の程度を明示するため
に、「警告」と「注意」に区分して掲載しています。
警告
電源は必ず交流 100V を使用する。
エアコンの電源など交流 200V のものがあります。誤って接続
すると、感電や火災のおそれがあります。
電源アダプターは、必ず指定のもの(PA-20)を使用する。
故障、発熱、火災などの原因になります。
電源コードをストーブなどの熱器具に近づけたり、無理に曲げた
り、傷つけたりしない。また、電源コードに重いものをのせない。
電源コードが破損し、感電や火災の原因になります。
この 機器 の内 部を 開け たり、内部
の部品を分解 したり改造し たりし
ない。
感電や火災、けが、または故 障の原
因に なり ます。異常 を感 じた 場合
など、点検 や修理は、必ずお 買い上
げの販売店ま たは巻末のヤ マハ電
気音響製品サ ービス拠点に ご依頼
ください。
この機器の上に花瓶や薬品など液体の入ったものを置かない。ま
た、浴室や雨天時の屋外など湿気の多いところで使用しない。
感電や火災、または故障の原因になります。
濡れた手で電源プラグを抜き差ししない。
感電のおそれがあります。
電源コードやプラグがいたんだ場合、または使用中に音が出なく
なったり 異常な におい や煙が 出たり した場 合は、す ぐに電 源ス
イッチを切り、電源プラグをコンセントから抜く。
感電や火災、または故障のおそ れがあります。至急、お買い上げの
販売店または 巻末のヤマハ 電気音響製品 サービス拠点 に点検を
ご依頼ください。
この機器や電源アダプターを落とすなどして破損した場合は、す
ぐに電源スイッチを切り、電源プラグをコンセントから抜く。
感電や火災、または故障のおそ れがあります。至急、お買い上げの
販売店または 巻末のヤマハ 電気音響製品 サービス拠点 に点検を
ご依頼ください。
「ご注意ください」という注意喚起を示します。
〜しないでくださいという「禁止」を示します。
「必ず実行」してくださいという強制を示します。
警告
この表示の欄は、「死亡す
る可能性または重傷を負
う可能性が想定される」
内容です。
注意
この表示の欄は、「傷害を
負う可能性または物的損
害が発生する可能性が想
定される」内容です。
電源 / 電源コード
必ず実行
必ず実行
禁止
分解禁止
禁止
水に注意
禁止
禁止
異常に気づいたら
必ず実行
必ず実行

MG12/4FX 3
注意
長期間使用しないときや落雷のおそれがあるときは、必ずコンセ
ントから電源プラグを抜く。
感電や火災、故障の原因になることがあります。
電源プ ラグ を抜 くと きは、電源
コード を持 たず に、必ず電源プ
ラグを持って引き抜く。
電源コードが破損して、感電や火
災の原因になることがあります。
電源アダプターは、この機器から 50cm 以上離す。
この機器に雑音が生じる場合があります。
電源アダプターは、布や布団で包んだりしない。
熱がこも ってケ ースが 変形し、火災の 原因に なるこ とがあ りま
す。
この機器を移動するときは、必ず 電源コードなどの接続ケーブル
をすべて外した上で行なう。
コードをいためたり、お客様や他 の方々が転倒したりするおそれ
があります。
イコライザーやフェーダーをすべて最大には設定しない。
接続した機器によっては、発振し たりスピーカーを破損したりす
る原因になることがあります。
直射日光のあ たる場所(日中の車内 など)や ストーブの近 くなど
極端に温度が 高くなると ころ、逆に 温度が極端 に低いところ、ま
た、ほこりや振動の多いところで使用しない。
この機器のパネルが変形したり、内部の部品が故障したりする原
因になります。
不安定な場所に置かない。
この機器が転倒して故障したり、お客様や他の方々がけがをした
りする原因になります。
テレ ビ やラ ジ オ、ステレオ、携
帯電 話な ど他 の電 気製 品 の近
くで使用しない。
この 機器 また はテ レビ や ラジ
オな どに 雑音 が生 じる 場 合が
あります。
他の機器と接 続する場合は、すべて の電源を切っ た上で行なう。
また、電源 を 入 れた り 切っ たりする前に、必ず機器の音量(ボ
リューム)を最小にする。
感電、聴力障害または機器の損傷になることがあります。
この機器のパネルのすき間に手や指を入れない。
お客様がけがをするおそれがあります。
この機器のパ ネルのすき間 から金属や紙 片などの異物 を入れな
い。
感電、ショート、火災や故障の原因になることがあります。入った
場合は、す ぐに電源ス イッチを切り、電源プ ラグをコンセ ントか
ら抜いた上で、お買い上げの販売 店または巻末のヤマハ電気音響
製品サービス拠点に点検をご依頼ください。
大きな音量で長時間ヘッドフォンやスピーカーを使用しない。
聴覚障害の原因になります。
この機器の上 にのったり 重いものを のせたりしな い。また、ボタ
ンやスイッチ、入出力端子などに無理な力を加えない。
この機器が破損したり、お客様や 他の方々がけがをしたりする原
因になります。
電源 / 電源コード
必ず実行
必ず実行
必ず実行
禁止
設置
必ず実行
禁止
禁止
禁止
禁止
接続
必ず実行
使用時の注意
禁止
禁止
禁止
禁止

MG12/4FX
4
•使用後は、必ず電源スイッチを切りましょう。
電源スイッチを切った状態(電源スイッチが「STANDBY」の状態)でも 微電流が流れています。スタンバイ時の消費電力 は、最小限の値で設 計されています。こ
の製品を長時間使用しないときは必ず電源プラグをコンセントから抜いてください。
•スイッチ、ボリ ュームコントロール、接続端子など の消耗部品は、使用時間により劣化 しやすいため、消耗に応じて部品の 交換が必要になります。消耗部品の交
換は、お買い上げの販売店または巻末のヤマハ電気音響製品サービス拠点にご相談ください。
■音楽を楽しむエチケット
•ヘッドフォンをご使用になる場合は、耳をあまり刺激しないよう適度な音量でお楽しみください。
* 本書に記載されている会社名および商品名は、各社の登録商標および商標です。
* この取扱説明書に掲載されているイラストは、すべて操作説明のためのものです。したがって実際の仕様と異なる場合があります。
XLR タイプコネクターのピン配列は、以下のとおりです。(IEC60268 規格に基づいています)
1:シールド(GND)、2:ホット(+)、3:コールド(−)
INSERT I/O 端子のフォーンジャックのピン配列は以下のとおりです。
Tip:OUT、Ring:IN、Sleeve:GND
●不適切な使用や改造により故障した場合の保証はいたしかねます。
楽しい音楽も時と場所によっては、大変気になるものです。隣近所への配慮を十分にいたしましょう。静かな夜間には小さな音でもよくと
おり、とくに低音は床 や壁などを伝わりや すく、思わぬところで迷 惑をかけてしまうこ とがあります。夜間の演 奏にはとくに気を配 りま
しょう。窓を閉めたり、ヘッドフォンをご使用になるのも一つの方法です。お互いに心を配り、快い生活環境を守りましょう。
市販の音楽 / サウンドデータは、私的使用のための複製など、著作権上問題にならない場合を除いて、権利者に無断で複製または転用することが禁じら
れています。ご使用時には、著作権の専門家にご相談されるなどのご配慮をお願いいたします。

はじめに
MG12/4FX 5
はじめに
このたびは、YAMAHA ミキシングコンソール、MG12/4FX をお買い求めいただきまして、まことにありがとうございます。
MG12/4FX は、多彩なインプットチャンネルを装備しているので、幅広い音楽シーンに応用できま す。また、高品位デジタ
ルエフェクトを内蔵していますので、本格的な音作りが実現できます。
MG12/4FX の優れた機能を十分に発揮させるとともに、末永くご愛用いただくために、この取扱説明書をご 使用の前に必ず
お読みください。お読みになったあとは、保証書とともに保管してください。
目次
はじめに 5
目次 ................................................................................................ 5
特長 ................................................................................................ 5
電源の準備 ....................................................................................6
電源を入れる ................................................................................ 6
ステップアップガイド 7
1. ミキサーの基礎知識.............................................................. 7
2. 入力された信号の流れ....................................................... 11
3. 「クリアなミックス」にするためのレベル調整 .............. 12
4. 外部エフェクト、モニターミックス、
グループについて............................................................... 14
5. より良いミックスのためのノウハウ................................ 16
6. MG12/4FX の内蔵エフェクターを使う ....................... 18
各部の名称と機能 19
チャンネルコントロール部 ...................................................... 19
マスターコントロール部 ..........................................................21
リア入出力部 ............................................................................. 23
セットアップ 25
セットアップにあたって ..........................................................25
セットアップ例 ......................................................................... 25
ラックマウント ......................................................................... 27
付録 28
仕様 ............................................................................................. 28
寸法図 ......................................................................................... 30
ブロック / レベルダイアグラム
............................................... 31
特長
インプットチャンネル ........................... 23 ページ
最大 6 つのマイク / ライン入力や、最大 4 つのステレオ入力に対
応しています。たとえば、マイク 4 本、ステレオ機器 4 台を接続
したり、マイク 6 本、ステレオ機器 2 台を接続したりするなど、
マイクからラインレベル機器、ステレオ出力のシンセサイザーま
で幅広い機器を組み合わせて使用できます。
ファンタム電源 (+48 V) ...................... 21 ページ
PHANTOM スイッチをオンにすると、マイク入力端子に一括し
てファンタム電源を供給することができます。外部電源の必要な
コンデンサーマイクも手軽に接続できます。
高性能デジタルエフェクト ..................... 22 ページ
内蔵のエフェクトを使用すると、MG12/4FX だけでもバリエー
ション豊かな音作りができます。EFFECT SEND 端 子も装備し
ていますので、外部エフェクターも使用できます。
AUX センドとステレオ AUX リターン
.............19、21 ページ
AUX SEND 端子からフェーダー調節後の信号を外部のシグナル
プロセッサーに送ったあと、外部で加工したステレオ信号を
RETURN 端子を経由して戻すことができます。また、各チャン
ネルの PRE スイッチをオンにすると、フェーダー調節前の信号
をAUX SEND 端子からモニター信号として出力できます。
ラックマウント..................................... 27 ページ
MG12/4FX にラックマウン ト金具が 付いて いるので、簡単に
ラックにマウントできます。用途に応じて、いろいろなセットアッ
プに対応できます。

はじめに
MG12/4FX
6
電源の準備
本体の電源スイッチが切れている(スタンバイになっている)
ことを確認します。
電源 アダプタ ーをご使 用になる ときは、付属 のアダプ ター
(PA-20) をご使用ください。
ほかの電源アダプターの使用は故障、発熱、発火などの原因
になります。このようなときは、保証期間内でも保証いたし
かねる場合がございますので、十分にご注意ください。
電源アダプターのプラグをリアパネルの AC ADAPTOR IN
(電源アダプター接続)端子に差し込んだあと (
1
)、固定リン
グを時計回りにまわして固定します (
2
。
)
アダプターの電源プラグを家庭用 (AC100 V) コンセントに
しっかり差し込みます。
•本機を使用しないときや落雷の恐れがあるときは、必ずコ
ンセントから電源アダプターを抜いてください。
•電源アダプターは、本機から 50cm以上離してご使用くだ
さい。電源アダプターと本機を近づけた状態でご使用にな
ると、ノイズが生じる場合があります。
電源を入れる
電源スイッチを「ON」側に押すと、電源が入ります。
「STANDBY」側に押すと電源が切れます。
電源スイッチが「STANDBY」の状態でも微電流が流れてい
ます。
本機を長時間使用しないときは、必ずコンセントから電源ア
ダプターを抜いてください。
1
2
1
2
1
2
3

ステップアップガイド
MG12/4FX 7
ステップアップガイド
■ミキサーを最大限に利用する
せっかく手に入れたミキサーをフル活用しない手はない!ミキサー を触るの
が初めてでも、読み終えれば「脱ビギナー」。このステップアップガイドでは、
ミキサーの基本的な知識から、本機を使ってより良いパフォーマン スを得る
ためのノウハウ、効果的なミックス方法について説明しています。
* ミキサーのセットアップ例について詳しくは、P25 の「セットアップ例」をご覧ください。
ミキサーとは「入力された信号をミックスし、レ ベル(音量)のバラン スを調節して、信号を送り出す装置」です。この章で
は、ミキサーの基礎知識について説明していきます。
1-1. 信号レベルとデシベル (dB) について
人間の耳に聞こえる最も小さな音を1とすると、人間が聞くことのできる最も大きな音はおよそ 1,000,000 にもなります。これでは桁が多
すぎて、音量を表すのに不便です。そこで、デシベル(dB)という単位を使って「最小の音と最大の音の差は 120 dB」 と表現します。
dB とは、ある基準レベルを 0 dB としたときの相対的な値です。音響機器では、音声を電気信号として扱います。dB の仲間の dBu という単
位で表すのが一般的で、0.775 V を基準レベル(0 dBu) としています。マイクの出力は、とても微弱で数 mV(
–60 dBu 〜 –30 dBu)程
度です。これに対してミキサーの最大出力は、12 V(
+24 dBu)程度にもなります。
1. ミキサーの基礎知識
+ 20 dBu
0 dBu
0.775 V
-
20 dBu
-
40 dBu
-
60 dBu
ミキサーやパワーアンプなどのプロ用の音響機器には、規定(標準)レベル +4 dBu のライン入出力
端子があります。
キーボードなどには、規定(標準)レベル –10 dBu のライン入出力端子があります。
マイクの信号レベルは、音源によってさまざまです。
一般のスピーチでは –30 dBu 程度ですが、鳥のさえずりなどは –50 dBu以下であったり、ドラム
を間近で収音すると 0 dBu に達することもあります。

MG12/4FX
8
ステップアップガイド
ミキサーで扱う信号にはさまざまなレベルがあります。
音響機器をつなぐときは、それぞれの規定(標準)出力レベルと規定(標準)入力レベルをできるだけ合わせます。ミキサーの多くの入力端子
には、GAIN(ゲイン)コントロールがあります。
ノイズの少ないクリアな音作りのために、接続する機器の出力レベルに合った入力端子を使いましょう。
1-2. バランスとアンバランスの違いについて
音響機器間で信号の受け渡しを行なうときには、通常「シールドケーブル」が使われます。
シールドケーブルを使った信号の受け渡しには、バランスとアンバランスの方式があります。
バランスは外部からのノイズに強いので、小さな信号の受け渡しをする場合やケーブルが長くなる場合に適しています。アンバランスは主にラ
インレベルの信号の受け渡しに使われます。
マイク................................................バランスが適しています。
ラインレベルの短い配線.................アンバランスで OK です。
ラインレベルの長い配線.................バランスが適しています。
私たちは普段、ラジオやテレビ、送電線、モーター、電気器具、コンピューターなどの電磁放射線(ノイズ)に囲まれた生活をしています。こ
れらのノイズの侵入を少なくするためには、ケーブルは必要最低限の長さで使いましょう。
■シールドケーブルのしくみ
シールドケーブルは下図のようにホット(とコールド)を金属の網状のもの(シールド)で覆った構造をしています。信号を受け渡しするとき
に、シールドがバリアとなって、外部ノイズから信号を保護します。
入力信号
出力信号
ゲインコントロール
適正レベル
大きすぎ
小さすぎ
ホット
コールド
シールド
(グラウンド)
外皮
バランス アンバランス

ステップアップガイド
MG12/4FX 9
■バランス方式のしくみ
両端が XLR 端子のケーブルは、通常このバランス方式です。信号の受け渡しに「ホット(+)」「コールド(−)」「グラウンド(GND)」の 3
本のワイヤーを使用します。
送信側では、元の信号「ホット(+)」に対して位相を反転した信号を「コールド(−)」に送ります。受信側では、「コールド(−)」の信号を
位相反転し「ホット(+)」の信号と合成します。
ケーブルにノイズが侵入した場合、「ホット(+)」と「コールド(−)」それぞれのラインに均等にノイズ が乗ります。受信側で「コールド
(−)」の信号を位相反転し、「ホット(+)」の信号と合成すると、ノイズだけが打ち消し合って、ノイズを取り除くことができます。
すなわちバランス方式は、外部ノイズに対して非常に強いということができます。
■アンバランス方式のしくみ
バランスケーブルは、端子やケーブルがアンバランスのものと比べて高価になります。そこで、伝送する信号が大きくてノイズの影響を受けに
くい場合や、音響機器間のケーブルが短い場合などは、アンバランスケーブルもよく使われます。
モノラルのフォーン端子や AV 機器に使われる RCA ピン端子のケーブルは、アンバランス方式です。
アンバランス方式は、バランス方式のグラウンド(GND)をコールド(−)と兼用にして、ホット(+)とグラウンド(GND)で信号の受け
渡しを行なう方式です。バランス方式のようにノイズを取り除くことはできませんが、通常この方式で使用される機器は、受け渡す信号レベル
が高いためアンバランス方式で十分対応できます。DI(*)などで信号をバランスに変換することもできます。
*DI........ ダイレクトボックス(Direct Injection Box)と呼ばれる機器です。
ギターなどの楽器をミキサーに直接入力すると、音やせやノイズの原因になります。
DI を楽器とミキサーの間に挿入すると、信号がバランスに変換され、音やせやノイズを防ぐことができます。
ノイズ
ホット
(+)
コールド
(−)
グラウンド
(GND)
送信側 ケーブル 受信側
位相反転
位相
反転
合成された信号
ノイズだけが打ち消し合う
ノイズ
送信側 ケーブル 受信側

MG12/4FX
10
ステップアップガイド
1-3. 端子の種類
音響機器には、いろいろな端子があります。
はじめて音響機器をつないだとき、いろいろ疑問がわきませんでしたか?
ここでは一般的な端子の種類を説明します。
■XLR 端子
バランス方式に対応していること、頑丈で変形しにくいこと、端子にロック 機構がついていて引っ
張っても接続が外れないようになっていることから、信頼性の要求される プロの現場などで使用頻
度が高い端子です。
XLR 端子どうしを接続するときはグラウンド端 子が最初に接触する構造になって いるため、RCA
ピン端子や Phone( フォーン ) 端子を接続するときに発生するようなノイズを防ぐことができるの
も大きな特徴です。
機器との接続には「オス側出力、メス側入力」が一般的です。
■Phone(フォーン)端子
「Phone( フォーン )」は、もともとこの形の端子が電話 (telephone) 交換機に使われていたことか
らついた名前です。フォーン端子にはステレオタイプとモノラルタイプの2つの種類があります。
ステレオタ イプは TRS フォーン とも呼 ばれ、ヘッ ドフォンな どのス テレオ 信号を扱う端 子や、
INSERT I/O 端子などに使います。バランス方式にも使うことができます。
モノラルタイプはアンバランス方式専用で、エレクトリックギターなどの 楽器やアンプなどに使い
ます。
■RCA ピン端子
ピンプラグと呼ばれ、 AV 機器で一般的に使われているアンバランス方式専用の端子です。信号の
種類によって色分けされていて、白の端子がオーディオの左(L)チャンネル、赤が右(R)チャン
ネルの信号を送るのに使います。
メス
オス
ステレオタイプ
モノラルタイプ
白
赤

ステップアップガイド
MG12/4FX 11
ミキサーを用いた音響システムの目的は、すべてのチャンネルの信号を 1 つに集めてバランスよくミックスすることです。入
力された信号が、ミキサーの中をどのような経路で流れていくかを理解しましょう。
2-1. ミキサー簡易ブロックダイアグラム
■入力チャンネル
1ヘッドアンプ
ミキサーに入力した信号が最初に通るアンプのことです。入力さ
れた信号のレベルに合わせて、ゲインコントロールで信号の増幅
/ 減衰率を調節できます。
入力された信号が小さい場合は増幅させ、信号が大きい場合は減
衰させて信号のレベルを調節します。
2イコライザー
イコライザーは、ある特定の周波数帯域をブースト(増幅)した
り、カット(減衰)したりして音色を変化させます。部屋の音響
特性に合わせて音色を補正したり、積極的な音作りに活用したり
と用途はさまざまです。ある周波数より下をカット(減衰)する
ハイパスフィルターなども、イコライザーの仲間に含まれます。
(P13 参照)
3ピークインジケーター
信号の大きさがミキ サーのヘッ ドアンプと イコライザーで扱え
るレベルを超えると、音は歪んでしまいます。そのレベルを超え
ないように監視するのがピークインジケーターです。
ピークインジケーターが点灯し続けている場合は、イコライザー
で無理な増幅をしていないかを確認し、必要に応じてヘッドアン
プのゲインコントロールを調整してレベルを下げます。
ピークインジケータ ーがミキサ ー内のどこ の段階の信号を検知
しているかを確認しておくことも大切です。本機のピークインジ
ケーターは、ヘッドアンプとイコライザーを通過したあとの信号
を検知しています。
4チャンネルフェーダー
チャンネルフェーダーは、各チャンネルの信号を各バスに送ると
きの音量を調節します(プリフェーダー信号を除く)。演奏中に
最もよく使う操作子と言えます。
■マスターセクション
5バス
バスのしくみを理解することはとても重要です。ミキサーを流れ
る信号は、「各チャンネルを上から下へ流れて、チャンネルフェー
ダーでレベル調整されたあと、左から順番にまとめられて、右端
のマスターフェーダーで全体のレベルが調整される」とイメージ
できます。この「左から順番にまとめる」のがバスの役割です。
本機は、ステレオバス(L、R)、グループバス(1、2)、AUX
バス、エフェクトバスの 6 バスのミキサーということができま
す。
6マスターフェーダーとレベルメーター
マスターフェーダーは、各チャンネルから送られてくる信号全体
のレベルを調整する部分です。具体的には、ステレオフェーダー、
グループフ ェーダ ー、AUX センドコ ントロールな どがあ りま
す。ミキサーの機種によっては、マスターフェーダーが複数ある
ものもあります。レベルメーターは、選択された出力バスに流れ
る信号のレベルを LED で表示します。
2. 入力された信号の流れ
1235 6
入力チャンネル マスターセクション
4
バスの流れ

MG12/4FX
12
ステップアップガイド
M
外部エフェクタ−やミックスダウンについて考える前に、各チャンネルに入力されるさまざまな信号のレベルの調整方法を知っ
ておきましょう。ここでは、ミキサーからベストパフォーマンスを引き出す調整手順の一例を紹介します。ただし、お使いにな
るミキサー、接続機器のタイプや SR 環境によって、手順は異なります。
電源スイッチを含むすべての スイッチをオフに して、レベル
コントロールを最小に設定します。
(マスターフェーダー、チャンネルフェーダー、グル ープ
フェーダー、ゲインコントロールなど)
イコライザーとパンは▼のある位置に設定します。
すべての外部機器の電源をオ フにして、各チャンネ ルにマイ
クや楽器、再生装置などを接続します。
•本機 のラベ ル欄に、パ ート名 を記し たドラ フティ ング
テープなどを貼っておくと便利です。
•外部機器の接続については、P25 、26 のセットアップ
例もご参照ください。
•ギターやベースなどの楽器を接続する場合は、本機とこ
れらの楽器の間に DI(P9参照)やプリアンプ、アンプ
シュミレーターなどを接続してください。本機とこれら
の楽器を直接接続すると、音やせやノイズの原因となり
ます。
スピーカー保護のために、周辺機器→本機→パワーアンプ(パ
ワードスピーカー)の順番で電源をオンにします。(電源をオ
フにするときは、逆の手順で行ないます。)
ファンタム電源を必要とする マイクを接続している場合に
は、パワーアンプ(パワードス ピーカー)の電源をオンに
する前に、本機のファンタム電源スイッチ(P21 参照)を
オンにしてください。
各チャンネルに入力された信 号を確認し、レベルを 調整しま
す。
各パートの最大入力時にピーク インジケーターが 一瞬点灯す
る程度に、ゲインコントロールを上げます。
各チャンネルにある PFL スイッチ(P20 参照)をオンに
すると、そのチャンネルに入力 された信号がフェーダーや
スイ ッチの 状態 に関係 なくモ ニター スピ ーカー(ヘ ッド
フォン)から出力されます。レベ ルメーターにも入力され
た信号の状態が表示されます。
必要に応じて、各チャンネルのイコライザーを調整します。
イコライザーを調整していて ピークインジケーターが頻繁
に点灯してしまう場合は、最大 入力時に一瞬点灯する程度
にゲインコントロールでレベルを下げてください。
マスターフェーダーを「0」の 位置まで上げま す。ミキサー
にグループフェーダーがある場合は、これも同様に上げます。
ST スイッチ、GROUP スイッチ(P20 参照)などのアサイ
ンスイッチで出力したい信号を選びます。
•使わないアサインスイッチはオフにしておくと、ノイズ
を減少させることができます。
•ミキサーの機種によっては、アサインスイッチが省略さ
れているものがあります。
その場合は、自動的にステレオバスに信号が出力されま
す。
各チャンネルフェーダーを上下 させてすべてのチ ャンネルを
ミックスし、マスターフェーダ ーでミックス全体の レベルを
調整します。
•各チャンネルの PFL スイッチと 2TR IN スイッチがオ
フの場合、ST-GROUP 切り替えスイッチで選んだ信号
をモニタースピーカー(ヘッドフォン)から聞くことが
できます。(P22 参照)
•レベルメーターのピーク LED が頻繁に点灯してしまう
場合は、各チャンネルのフェーダーを少しずつ下げ、信
号が歪まないように調整してください。
3-1.「クリアなミックス」の鍵を握るゲイン
コントロール
ミキサーの簡易ブロックダイアグラムを見直してみましょう。
ミキサー内のヘッドアンプからマ スターフェーダーにい たる各段階
で、信号に多少ノイズが混入してし まいます。ノイズの少 ないクリ
アな音質を作るために、入力された 信号をミキサー内の できるだけ
早い段階で増幅することがポ イントです。つまり、ヘッ ドアンプに
設けられたゲインコントロール で、信号のレベルをでき るだけ増幅
させることが大切です。ただし、レ ベルを増幅すると いっても、ク
リッピングを起こして音が歪 んでしまっては台 なしです。あくまで
「クリッピング直前まで」増幅させることがコツです。
3.「クリアなミックス」にするためのレベル調整
1
NOTE
2
NOTE
3
NOTE
4
NOTE
5
NOTE
6
7
NOTE
8
NOTE

ステップアップガイド
MG12/4FX 13
3-2. ベストパフォーマンスのための
イコライザー設定
各チャンネルをまとめてミック スするとき、あるチャン ネルの周波
数帯域とほかのチャンネルの周波 数帯域とがぶつかり合 っている部
分をなくし、全体をうまくまとめて いくのがイコライザ ーを使う目
的のひとつです。ミックスでは、あく までその信号を自 然に再現し
てあげるのがポイントです。
基音:各楽器の音程感を与える周波数の音
倍音:それ以外の周波数の音
■さらにクリアなミックスにするためのカット
たとえば、シンバルの音は低音域か ら中音域の範囲に基 音がある楽
器ですが、普段私たちが音楽 CD を聴くときなどはあまりこの基音
を意識することはありません。
ここで、イコライザーを使ってシン バルのチャンネルの 低音域を下
げてみましょう。シンバルの低音域 をカットしてミック スした音は
よりすっきりとした感じになり、ほ かの楽器の低音域の 音がより鮮
明に聞こえてきます。同じようにピ アノも低音域から中 音域に基音
がある楽器なので、低音域を少しカ ットすることでほか の楽器の音
(特にドラムやベース)をより効果 的に引き立てること ができます。
もちろん、ピアノがソロ演奏をして いるときはこのよう なことはし
たくはないものです。
■ブーストは慎重に
特殊なミックスにしたい場合は、好 きなだけブーストし ても良いか
もしれません。し かし、クリ アな音 でのミックスに したい場 合は、
ブーストは慎重にかけていって ください。ブーストのか けすぎはノ
イズを増幅させてしまう原因に もなります。バスドラム やベースな
どは、基音となる低音域以外に中音 域から高音域にわた って幅広い
倍音があります。バスドラムやベー スのアタック感を強 調したい場
合は、それらの高音域を少しブー ストしてみると良い でしょう。同
じように、ボーカルも高音域を少 しブーストすると、臨 場感のある
いきいきとしたミックスになります。
■イコライザ−設定のコツ
ミックスされた音全体をよく聞 いてみましょう。もしそ の音が鮮明
に聞こえなければ、ブーストでミックスの透明感を出そうとせずに、
どのパートがクリアなミックス を邪魔しているのか を見極め、その
パートで不自然に飛び出している 周波数帯域を少しだけ カットして
みましょう。ミックス全体をよく 聞き、引き立てたい音 を邪魔して
いるのは何かを考えながらイコラ イザーを使っていくと 良いでしょ
う。イコライザーのかけすぎも禁 物です。常にイコライ ザーで調整
前の音と比較しながら音作りを進めていきましょう。
■ハイパスフィルターの使い方
ハイパスフィルターとは、ある周波 数より下の周波数帯 域の信号を
カットする機能です。本機は、ハイパ スフィルターをオ ンにすると
80 Hz 以下の超低音域がカットされます。ボーカルの息などがマイ
クに吹きかかったときのボッと いったノイズや、マイ クを持つ
ときのゴトゴトというハンドリ ングノイズのほか、マ イクスタ
ンドを通して床から伝わってく る振動などを軽減し ます。マイクを
使って収音するときは、特殊な場 合を除き、オンにして おくことを
おすすめします。
周波数について
人間の可聴範囲は 20 Hz 〜 2 0 kHz くらいとされ、私たちの会
話は 300 Hz から 3 kHz くらいの間で行なわれています。また、
ギターのチューニングな どに使われる 音叉の周波数は 440 Hz
で、これを平均律音階の「ラ(A)」としています。それを基準
に、周波数が 2 倍(880 Hz)になると、音程は 1 オクターブ
上がり周波数が半分(220 Hz)になると、音程は 1 オクターブ
下がります。
本機は、より多くの楽器で大きな効果が得られるように、イ
コライザーの基準周波数を LOW/MID/HIGH でそれぞれ
10 0 Hz /2 .5 kHz/1 0 kHz に設定 して います 。
周波数帯域 (Hz)
MID ブースト
(増幅)
LOW ブースト
(増幅)
LOW フラット
LOW カット
(減衰)
HIGH ブースト
(増幅)
HIGH フラット
HIGH カット
(減衰)
MID カット
(減衰)
MID フラット
信
号
レ
ベ
ル
(dB)
20 50 100
トロンボーン
トランペット
ギター
ベース
シンバル
スネアドラム
バスドラム
ピアノ
200 500 1k 2k 5k 10k 20k (Hz)
代表的な楽器の基音 と倍音 のおおまかな分布
周波数

MG12/4FX
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4-1. モニターセンドとエフェクターのため
のAUX バス
AUX バス(P11 参照)は、用途に応じて使い分けることができま
す。通常は、ステージ上のプレーヤーのモニターとして使ったり、リ
バーブやディレイなどのエフェク トをかけたりといった 用途に使い
ます。各チャンネルの AUX コントロール部には、ほとんどの場合
プリフェーダーかポストフェーダ ーを切り替えるスイッ チがついて
います。ポイントは、AUX バス をモニタ ー用また は外部エフェク
ター用として使用する場合に、それぞれプリ / ポストフェーダー信
号のどちらを使うのかということです。本機には AUX コントロール
にPRE スイッチがついており、プリ / ポストフェーダー信号を切
り替えることができます。
■プリ/ポストの使い分け
プリフェーダー
チャンネルフェーダーを通る前の段階の信号です。信号のセンド(出
力)レベルは AUX センドコントロールで調整し、チャンネルフェー
ダーの影響は受けません。プリフ ェーダーの信号は、プ レーヤーの
モニター用として最適です。
ステージ上のプレーヤーにとっ て、モニターバランスは 常に一定で
ある方が演奏しやすいものです。たとえば、ギターソロはギターチャ
ンネルのフェーダーを上げてギタ ーをより目立たせるよ うに調整し
ますが、ポストフェーダーの信号をモニターとして送っていると、同
時にステージ上のプレーヤーのモ ニターバランスまで変 わってしま
うことになります。このようなこ とから、モニター用の 信号はプリ
フェーダーで送ります。
ポストフェーダー
チャンネルフェーダーを通った あとの段階の信号で す。信号のセン
ド(出力)レベルは AUX センドコントロールとチャンネルフェー
ダーの両方で調整します。ポスト フェーダーの信号は 、チャンネル
フェーダーの影響を受けるので、リバーブなど(P17 参照)残響音
を付加するようなエフェクターに送る信号に最適です。
フェーダーを上 げると原 音ととも にリバーブの効果 が大きく なり、
フェーダーを下げると原音ととも にリバーブの効果も小 さくなりま
す。原音とエフェクターの効果音と の割合は常に一定の バランスで
音量調整ができます。
4. 外部エフェクト、モニターミックス、グループについて
AUX RETURN レベル
マスター
フェーダー
チャンネル
フェーダー
AUX SENDレベル
プリ / ポスト使い分けの例
モニターミックス時のプリフェーダーセンド センド信号はモニター用パワーアン
プやスピーカーシステムに送られます。チャンネルフェーダーはセンドレベルに影
響を与えません。モニターミックスはメインミックスから完全に独立させることが
できます。この場合はリターン信号は使いません。
外部エフェクト加工時のポストフェーダーセンド センド信号はリバーブなどの外
部エフェクタ−に送られ、そのエフェクタ−から AUX リターン端子などに送り返
され、各バスへミックスされます。センドレベルはチャンネルフェーダーの影響を
受けるので、エフェクターへ送られる信号のミックスバランスもそれにともなって
変化します。
AUX SEND レベル

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MG12/4FX 15
4-2. 各チャンネルの信号を加工するための
INSERT I/O 端子
信号を外部エフェクターで加工するという点では AUX と同じです
が、AUX が「複数のチャンネルの 信号をまと めて1つのエ フェク
ターへ送る」のに対して、INSERT I/O は「チャンネルごとの信号
をエフェクターへ送る」ときに使います。
INSERT I/O 端子に送られる信号は、ミキサーのゲインコントロー
ルで適切なレベルに増幅 / 減衰されています。この端子には、主に
コンプレッサー、リミッター、イコラ イザーといった信 号全体をコ
ントロールするエフェクターを接続します。
もちろん、リバーブなどのエフェ クターでも、そのチャ ンネルだけ
にかけるのであれば、接続することができます。
INSERT I/O 端子は、TRS 型のフォーン端子を利用した双方向の接
続となっています。接続には下図の ような特殊インサー トケーブル
が必要です。別売りのヤ マハ イン サー トケ ーブ ル
YIC025/050/070 などをご使用ください。
4-3.グループ化
グループバスとグループフェー ダーをうまく利用す れば、ミックス
を円滑に行なうことができま す。グループ化は、特にラ イブのとき
に便利です。グループ化することに よって各チャンネル で設定した
バランスを保ったまま、グループ全体の音量レベルを 1 つのフェー
ダーで調節することができます。
グループバスのもう1つの使い 方として、ドラム全体に コンプレッ
サーやフェーザーなどのエフェ クターをかける場合 に、グループ化
したドラムのチャンネルを GROUP OUT 端子からエフェクターへ
入力し、エフェクター出力から AUX リターン 端子やステレオチャ
ンネルを使いメイン(ST)バスへミックスすることができます。
また、グループはステレオ信号な ので、各チャンネルで 設定した定
位(P16 参照)を保ったまま信号をエフェクターへ送ることができ
ます。
チャンネル
フェーダー
INSERT I/O 端子にエフェクターを接続す
ると、ミキサ−内の信号の流れは中断さ
れ、信号は INSERT SEND を通ってミキ
サーの外に送られます。
エフェクターで加工された信号は、
INSERT RETURN からミキサー内の通常
の流れに戻ります。
INSERT I/O 端子へ
外部プロセッサーの入力端子へ
外部プロセッサーの出力端子へ
リング
スリーブ
チップ
スリーブ チップ
TO ST
グループバス
メイン(ST)バス
ステレオマスター
フェーダー
ステレオに割り当てられた
チャンネルフェーダー
(個々にコントロールされます。)
グループに割り当てられた
チャンネルフェーダー
(グループとしてコントロールされます。)
通常、グループバス信号だけでもグループアウトプットを通して出力で
きますが、TO ST スイッチをオンにすると、メイン(ST)バスへミッ
クスすることもできます。
ドラムミックス など、バランスを保持 する必要があるチ ャンネルをグ
ループ化し、グループバスに割り当てることができます。チャンネル間
のミックスバランスをチャンネルフェーダーで確立し、いったんグルー
プ化してしまえば、グル−プ全体のレベルはグループフェーダー 1 つ
で調整できます。
グループ
フェーダー

MG12/4FX
16
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ミックスにルールはありません。ミックスする人が一番やりやすい方法でシステムを作り上げていけばよいのです。ただし、「作
り上げていく」ということがポイントであり、決して偶然にできるということではありません。音源に適したシステム的なアプ
ローチをすれば、より良いミックスを作り出すことができます。ここでは、ミックスの実践的なノウハウをいくつか紹介します。
5-1. フェーダーを下げた状態からの音量調整
単純なことですが、ミックスを始めるにあたって、チャンネルフェー
ダーはすべて下げてしまうこと をおすすめします。すべ てのフェー
ダーを標準の位置にしておいて 始めることもできま すが、この方法
では音のバランスの感覚がわか らなくなってしまい ます。したがっ
て、フェーダーを全部下げた状態か ら一つ一つ上げてい くようにし
ます。でも、どのチャンネルから始めれば良いのでしょうか?
ここでは 2 つの例を紹介します。
ex:
ピアノトリオがバックのバラード
ボーカルが重要な鍵をにぎるバラード調の曲であれば、ボーカル
を基準と して ミッ クスをして いく のが 良いでし ょう。つ まり、
ボーカルのチ ャンネル のフェー ダーを最初にノミ ナルに持 って
いき、それからほかの楽器を加えていきます。ボーカルの次にど
のパート を追 加し ていくかは、 演奏し てい る楽器の タイ プや、
ミックスをする人の好みにもよりますが、このケースならば、次
にピアノを持ってくるのが良いでしょう。ボーカルとピアノの関
係を調整してから、ベースとドラムを全体のバランスに注意しな
がら加えていけば良いでしょう。
ファンキーな R&B
ノリを重視したファンキーな R&B のナンバーをミックスすると
きは、アプローチはまた違ってきます。この場合、ほとんどのエ
ンジニアはドラムを基準とし、次にベースを追加していきます。ド
ラムとベースの関係は「ドライブ感」やその曲のノリを出すのに
極めて重要なポイントです。特にバスドラムとベースとの連携に
注意してみてください。ほとんど 1 つの楽器のように聞こえるは
ずです。バスドラムがパンチを与え、ベースがピッチを与えます。
5-2. バランスを取るためのパン
パン(PAN)は、「パノラマ(Panorama)」を語源として生まれた
言葉で、日本語では「定位」とも呼んでいます。
ステレオサウンドの場合に、L と R 間のレベルの差を調整するのに
パンを使います。
私たちの耳は、音が L 側のスピーカーだけから出ていると、そのパー
トが L 側で演奏しているように感じ、L と R のスピーカーから同じ
音量で音が出ていると、そのパート が2つのスピーカー の真ん中で
演奏しているように感じます。こ の人間の感覚を利用 して、お互い
の音がぶつかり合わないように左 右に振り分けてスペー スを確保し
てあげるのが、パンの役割です。
■分散させよう!
ミックスで各楽器の音作りが終 わったら、チャンネルご とに定位を
決め、全体のバランスをとってい きます。音どうしの関 係を強調す
るために、意図的にそれぞれの音 を近づけて定位させ たり、重ね合
わせるよ うな 場合も あります。パ ンを使 った 定位のさせ 方に も決
まったル ール はあり ませんが、低 音楽器 やそ の曲にとっ て大 切な
パートの音を真ん中に定位させ、左 右に振ったそのほか の音はでき
るだけ左右対称に振り分ける のがコツです。一般的に は、ボーカル
やソロ楽器、ベース、バスドラムやス ネアなどは真ん中 に定位させ
ます。
ただし、左右に極端に振り分けると、ライブ SR ではどちらか片方
のスピーカーの近くにいるリスナ ーにとってとてもアン バランスな
ミックスに聞こえてしまいます。
定位のさせ方も、ライブ SR 用と録音用とでは若干違いますので注
意が必要です。
5. より良いミックスのためのノウハウ
このようにミックスにルールというものはありませんが、大まか
なテクニックはあるのです。

ステップアップガイド
MG12/4FX 17
5-3. 最終ミックス
ミキサーのAUXバスを通してリバーブやディレイといったエフェク
ターを上手に使えば、ミックスをさらに磨き上げることができます。
しかし、使いすぎてしまうとせっか くミックスした音が 色あせてし
まい、全体的に透明感がなくなってきてしまいます。リバーブやディ
レイの設定によって、効果音と原音 が絡み合ったときの 音質に大き
な違いが生まれます。
■リバーブ / ディレイタイム
外部リバーブ / ディレイ機器の種類はさまざまですが、ほとんどの
場合、リバーブ / ディレイタイムを調整できるようになっています。
リバーブ / ディレイタイムをほんの少し工夫するだけで、音質に大
きな差が生まれます。ディレイタ イムは、得ようとして いる効果に
合わせて調整します。ボーカルに エコーを付加したい 場合は、曲の
テンポに合わせて付点八分 音符( )の長さなどに設 定すると、心
地よい効果が得られます。リバ ーブタイムは、デンシ ティ(残響密
度)の設定にもよりますが、ディレイと違って音が拡散されるので、
テンポにぴったり合わせる必 要はありません。基本的 には、テンポ
の速い曲や動きのある曲には短 めの設定、バラードなど のテンポの
ゆっくりした曲には長めの設定をします。
■リバーブトーン
いかに明るくて 低音がき いたリバ ーブを作り出すか というこ とも、
最終ミックスをするうえで重要 なポイントです。自然に 生じる残響
(リバーブ)は、時間が経つにしたがって低音域より高音域が早く減
衰していく傾向があります。
したがって、高音域のトーンを上 げすぎると、単に不自 然に聞こえ
るばかりではなく、せっかくミック スで調節してきたほ かの高音域
を干渉してしまいます。逆に下げす ぎてもこもった音に なってしま
います。
■リバーブレベル
ミックスの作業を続けていると、普 段の音を聞く感覚が 徐々に麻痺
してくるものです。イコライザーや 外部エフェクターで 加工しすぎ
てすっか り色あ せた ミックスを完 璧な ミック スだと思い 込ん でし
まった経験はないでしょ うか?これは「ミックス の罠」です。こう
した罠に陥らないためにも、リバー ブレベルを一度すべ て下げてみ
ましょう。それから必要なだけ徐々 にリバーブレベルを 上げていく
ようにすれば、本当に必要なレベルを知ることができます。
■最終ミックスにあたって
イコライザーは、音色を調整してパ ート間での音のぶつ かる周波数
帯域を調整できます。パンは、左右の 空間を調整してパ ートを分散
できます。リバーブやディレイは、パートの奥行感を表現できます。
すなわち、前後の空間を調整して、パートを分散できます。そして、
これらすべての音量バランスをフ ェーダーで整えてミッ クスができ
あがります。
埋もれて しま ったパ ートを引 き立て たい 場合は、ど の要 素が その
パートを邪魔しているかを見極 め、どの方法で音を分離 させるのが
効果的かを考えていきましょう。
本機は内蔵エフェクターを搭載しております。外部エフェクター
を使わなくて も各チャ ンネルに リバーブやディレ イを加え たり
することができます。詳細は次ページをご覧ください。

MG12/4FX
18
ステップアップガイド
本機はデジタルエフェクターを内蔵していますので、各チャンネルにリバーブやディレイなどの効果音を手軽に加えることがで
きます。
■リバーブやディレイをかける
ON スイッチを押してエフェクターをオンにします。
オンにすると、スイッチがオレ ンジ色に点灯し ます。別売の
フットスイッチ FC5 を FOOT SWITCH 端子に接続すると、
内蔵エフェクトのオン / オフを足元で切り替えることができ
ます。
電源スイッチをオンにするたびに、ON スイッチが点灯し
て内蔵エフェクトが有効になります。
PROGRAM 選択ダイ アルでエフェクトプログ ラムを選びま
す。
EFFECT RTN フェーダーで効果音の量を調整します。
EFFECT RTN フェーダーでは、全体の効果音の量を調整
します。
各チャンネルの効果音の設定は手順 4 で行ないます。
エフェクトをかけたいチャンネルのEFFECT コントロールで
効果音のかかり具合を調整します。
PARAMETER コントロールでリバーブ / ディレイタイム
を調整することもできます。
6. MG12/4FX の内蔵エフェクターを使う
内蔵エフェクター
(DSP)部
1
NOTE
2
3
NOTE
4
NOTE
まず曲ありき
ミックスとは、「曲のためのミックス」でなくてはなりません。「ミックスするための曲」があるわけで はありません。その曲を理解し、そ
れをミックスの作業へ活かしてください。その曲は何を表現しているのか、メッセージを伝えるのにどん な楽器やテクニックが使われてい
るのかといったことです。ミックスには高度な技術が必要とされますが、ミックス自体もまた、楽器の演奏と同じように芸術的なものです。
アプローチ次第で、ミックスは曲の重要な要素となります。

各部の名称と機能
MG12/4FX 19
各部の名称と機能
チャンネルコントロール部
1GAIN コントロール
入力信号のレベルに応じて感度を調整します。
信号の最大入力時に PEAK インジケーター 2が点灯する程度
に設定すると、S/N とダイナミックレンジのバランスがとれた
良好な状態になります。
–60 〜 –16 は MIC 入力の調整レベルを表し、
–34 〜 +10 は
LINE 入力の調整レベルを表します。
2PEAK インジケーター
EQ 後のピークレベルを検出し、クリッピングの手前 3 dB に達
すると赤く点灯します。
XLR が併設されたステレオインプットチャンネル(5/6、7/8)
は、EQ 後および MIC アンプ後のピークレベルを検出し、どち
らかの信号がクリッピングの手前 3 dB に達すると赤く点灯し
ます。
3(ハイパスフィルター)スイッチ
ハイパスフィルターのオン / オフを切り替えます。スイッチを
押す とハイパスフィルターがオンになり、80 Hz 以下の周
波数帯域を減衰させます。ただし ステレオインプッ トチャンネ
ルのライン入力では、ハイパスフィルターがかかりません。
4イコライザー(HIGH、MID、LOW)
3 バンドイコライザーで、各チャンネルの高域、中域、低域を
調整します。ツマミを▼の位置に するとフラット な特性と
なります。ツマミを右に回すと その周波数帯域が 増幅され、左
に回すと減衰されます。
各帯域の EQ タイプ、基準周波数、最大可変幅は下記のとおり
です。
5AUX コントロール
各チャンネルからAUXバスに送られる信号のレベルをそれぞれ
調整します。
ツマミの▼の位置を目安に調整してください。
ステレオチャンネルの場合は、INPUT L(奇数チャンネル)と
INPUT R(偶数チャンネル)の信号が ミックス されて、AUX
バスへ送られます。
ST スイッチ 9の状態に関係なく、信号をバスへ出力でき
ます。
1
6
A
B
7
9
0
5
8
3
4
2
6
A
B
7
9
0
5
8
6
A
B
7
9
0
5
8
チャンネル
1〜4
(モノラル)
チャンネル
5/6、7/8
(ステレオ)
チャンネル
9/10、11/12
(ステレオ)
バンド タイプ 基準周波数 最大可変幅
HIGH シェルビング 10 kHz
±15 dB
MID ピーキング 2.5 kHz
LOW シェルビング 100 Hz
NOTE

各部の名称と機能
MG12/4FX
20
6PRE スイッチ
AUX の信号 取り 出 し位置を、プ リフ ェ ーダーま たは ポス ト
フェーダーに切り替えること ができます。このスイ ッチをオン
にすると、チャンネルフェーダー B調整前の信号が AUX
バスへ送られ、チャンネルフェーダー Bの影響は受けません。
このスイッチをオフ にすると、チャンネルフェーダー B調
整後の信号が AUX バスへ送られます。
7EFFECT コントロール
各チャンネルから EFFECT バスに送ら れる信号のレ ベルを調
整します。EFFECT バスに送られる信号は、チャンネルフェー
ダーの影響を受けます。ステレオ チャンネル(CH5/6、7/8、
9/10、11/12)の場合は、L と R の信号が ミックス されて
EFFECT バスに送られます。
8PAN コントロール(CH 1 〜 4)
PAN/BAL コントロール(CH 5/6、7/8)
BAL コントロール(CH 9/10、11/12)
PAN コントロールは、各チャンネルの信号を、GROUP 1-2 バ
スまたはステレオ L-R バスのどの位置に定位させるかを決めま
す。
BALコントロールは左右チャンネルの音量バランスを決めます。
INPUT L(奇数チャンネル)に入力された信号は GROUP 1 バ
スまたはステレオ L バスへ、INPUT R(偶数チャンネル)に入
力された信号はGROUP 2 バスまたはステレオ R バスへ振り分
けられます。
PAN と B AL が併記されたコントロール (CH5/6、7/8) で、
MIC 入力端子または INPUT L (MONO) だけに信号を入力
した場合は PAN、INPUT L と R へ信号を入力した場合は
BAL として利用します。
9ST スイッチ
各チャンネルの信号をステレオ L-R バスに出力するスイッチで
す。
スイッチをオン にすると、ステレオ L-R バスに信号が送ら
れます。
オンの状態でスイッチがオレンジ色に点灯します。
0PFL スイッチ
プリフェーダーリッスン(Pre-Fader Listen)の略です。
スイッチをオン にするとインジケーターが点灯し、選択した
チャンネルのフェーダー B調整前の信号を PHONES 端子と
C-R OUT 端子でモニターできます。
AGROUP スイッチ
各チャンネルの信号をGROUP 1-2 バスに出力するスイッチで
す。
スイッチをオン にすると、GROUP 1-2 バスに信号が送ら
れます。
ST スイッチ 9の状態に関係なく、バスに出力できます。
Bチャンネルフェーダー
インプットチャンネルの信号 の出力レベルを調節 し、チャンネ
ル間の音量バランスを調整します。
ノイズ減少のために、使用しないチャンネルのフェーダーは
下げておきます。
NOTE
NOTE
NOTE
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1
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